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同人ゲームはきらい?~C80ノベル紹介~

【テンプレ】
「ユリイス名義」は、台鼎がオフラインで寄稿した文章の再掲や、常体でドヤ顔レビューしたいときに使う用のカテゴリです。
ドヤ顔で語ってますが情報にほぼソースや例がありません。脳内設定の恐れすら。
また、オタク全般に関する批評・レビューを専門にした本向けの原稿なので、エロゲレビューらしからぬ表現があったりします。

数年ほど前の原稿も含まれるので、色々変なことを言ってる可能性はありますがご了承ください。

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紹介作品:
『わーすと☆コンタクト』
『闇を奔る刃の煌き』
『鍵っ子少女』
『クリアレイン』
『嘘つきナレットの優しい暗殺者』
他8作、省略
(掲載順)


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『わーすと☆コンタクト』
non color

 死神な幼馴染・花奈多からの熱烈なアプローチを断り続ける主人公、綾高。そんな彼のもとに、突如宇宙船が現れ、「平均的地球人」のサンプルとして宇宙人との共同生活を余儀なくされてしまうのであった。
 今夏、宇宙から「最悪」が降ってくる――!


 良く言えばカオス、悪く言ってもカオス。暖炉からフライドチキンを出前したら拳銃が出てきて殺されかかるような不思議空間での宇宙人との共同生活は息をつかせぬネタの応酬で、混沌を通り越してある種の美しさすら感じさせるレベルだ。そんな彼らに負けず劣らずの変人揃いの地球人たちも巻き込んで繰り広げられるドタバタは、ほとんどのプレイヤーを置いてけぼりにしながら強引に引きずりまわして笑わせにかかってくる。 

 さらに恐ろしいのは、詩のごとく言葉で遊ぶテキストによってその空気が地続きになったままいつの間にかシナリオがちゃんと進行していること。ドタバタを楽しんでるうちに気付いた頃には終盤に差し掛かっていていい話が展開されており、宇宙人どもの訳の分からなさや詠うように韻を踏みまくるテキストも手伝い、プレイヤーに残されるのはきっと「なんかすごかった」という言葉にしがたい読後感だ。

 SF的な視点から真面目にこの作品を眺めてみるなら、中盤までの宇宙人たちの言動の不可解さは、「言語を解す異星人」あるいはもっと広範に「文化の違う土地の人々」とのコミュニケーションの難しさがコミカルに表現されたものであろう。たとえ双方が友好的な交流を望んでいたとしても、「相手の為に」という気持ちを産むそれぞれの背景が違うことによって互い不快感や怒りを感じさせてしまうことは、日常生活にすらもちろんのようにある。それが全く違う星の住人であればいかほどであろうか、確かにこの作品の宇宙人は(友好的だったかは微妙なところだが)地球の常識からすればハチャメチャで、ときに不快な存在ですらあった。

 それでもこの物語を楽しく締めくくることができたのは、それはひとえに「笑い」の力のおかげなのだろう。良いことも悪いことも笑いとばすこと。もしそれを共有することができたなら、宇宙人とのファーストコンタクトだってきっと、怖くはない。

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『闇を奔る刃の煌き』
影法師

 時は幕末。片田舎の町でくすぶっていた貧乏侍、片倉重蔵。道場へと向かう折、彼は一人の娘とすれ違う。名も知らぬ娘だ。しかし、彼は直感したのだ。――己は今、運命とすれ違ったのだ、と。
 「夫婦になりましょう」。あまりに唐突な彼の求愛を受けたのは商家の一人娘、中村蛍。彼らの出会いが、全ての物語の始まりであった。


この作品の謳い文句は「二人三脚で困難に立ち向かい、成り上がっていく痛快立志伝」であるが、確かにこの『闇奔』を語る上で、片倉夫婦の躍進ぶりを欠かすことはできるまい。

 冒頭からして、この二人は(正しい意味でも誤用されている意味でも)破天荒なのだ。出会い頭に真顔で求婚する男も男だが、それを受ける女も女である。だがしかし、このシーン一つをとっても、重蔵の言には「外見は内面を映す鏡になりえる」という論を呑ませてしまうだけの気迫と説得力が、全く動じることもなくその言説に返答する蛍の姿には、その承諾に重みを与えるだけの気高さがある。驚くべき雄弁さと、それと同等以上の行動力。主人公補正などという言葉もばっさりと切り捨ててしまえるような言行一致の不敵さ、これが彼らの持つ魅力だ。

 そんな彼らに待ち受けるのは、決して小さくはない壁の数々である。重蔵がいかな剣豪であったとしても、たった一人で官軍を叩き伏せることは叶うまい。いかに蛍に商才があろうとも、町の商人と職人全てを相手取って正面から争うなどできようはずもない。けれど彼らは、乗り越えなくてはならないのだ。惚れた女の、見初めた男のために、不幸になることなど許されないのだから。だから強大な敵に彼らは、一人でなく、夫婦の絆で立ち向かう。お互いの足りない部分を補いあい、ときには彼らを慕う友や家族の力を借りながら、彼らは彼ら自身の幸福をつかんでいくのだ。己のためではなくお互いのため己と伴侶の力ずくで成り上がっていく姿が、そして彼らの言葉と行動が周囲の人々の心を動かしていく様が見せる、力強い歩みの気持ちよさ、泣きたくなるほどの愛や絆の温かさ。これはもう痛快と呼ぶほかない。……これが、この作品の「一つの」側面である。

 この作品の真価は、この「痛快」の積み上がった先に待ち構えている結末にこそある。彼らの快進撃の行方と、劇中に大胆に敷かれた布石、そしてプレイヤーが感じているかもしれない小さな違和感、あるいは後日談にあたる前作『流れ落ちる調べに乗せて』を知る者が抱えているであろう疑問。それらが全て矛盾なく符合する劇的な真相と、それが示す事実の重さには、先の痛快さとは違う痛烈な衝撃が雷撃のごとくプレイヤーを襲うであろう。そうして幕を下ろされる物語にプレイヤーが虚脱感とともに感じるものはきっと、因果の奇怪さや業の深さといったものであるに違いない。

 主人公の成功が前提となるのが、立志伝というものである。しかしこの「立志伝」は、そんなご都合主義の一つ向こうに底知れぬ深淵を持った、全くもって侮ることのできない作品であった。

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『鍵っ子少女~陽射しの中のおるすばん~』
私立さくらんぼ小学校

 午後三時、マンションの隣の部屋から、鍵を開ける音が聞こえる。紫苑ちゃんが学校から帰ってきたのだ。
 紫苑ちゃんはあなたの小さな恋人。お昼は仕事でいないママの留守に、紫苑ちゃんにエッチなイタズラをたくさんしちゃおう!


 「萌え作品と見せかけて実は鬱グロ」「抜くためのティッシュで涙を拭いていた」などという、しばしば「釣り」と揶揄される作品は世に数あるが、この作品もその内の一つであろう。いかにもロリ抜きゲーで有名な同サークルの作品らしい見てくれであるが、その実態は、同サークルの近作『世界と少女とお菓子の剣』と同様「子供と大人」をテーマに据えた一作である。

 もはやライターのお家芸とも言える鮮烈な子供世界の写実に加えて、構成や叙述の方法にも工夫を凝らした実験的な試みがなされており、よりエンターテインメント作品らしいドラマチックな作りになっている。ヒロインといちゃつくパートにすらささやかな伏線が仕込まれているのには思わず舌を巻いた。ただ、シリアスな場面での大仰でケレン味のあるセリフ回しが相まって、少々やりすぎ、くどすぎ、あざとすぎな感があるのは否めない。

 また、同様のテーマの作品を何回かリリースしているうちに、そろそろ大人の描写がステレオタイプになっているきらいがある。小中学生だけでなく、大学生などもなかなか鋭い描き方がなされていたので、決して「子供しか書けない」わけではないとは思うのだが……。

 そして、『せかけん』以来のにわかファンである筆者にとってはこのシリアス路線も歓迎したいのものなのであるが、一方で旧来のファンが離れていってはいないだろうか、気がかりではある。

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『クリアレイン』


 五月の始まり、アパートの部屋に突如として現れた幽霊の女の子。彼女は声ではなく文字で、「かすみ」と名乗った。
 記憶と声をなくした幽霊少女と、主人公の住まう苑馬荘の住人たち。彼らを中心に、物語は動き出す。降り注ぐクリアレインの音の中で――


 青春時代の終わりに差し掛かった大学生たちと、今生の終わりに瀕した幽霊たちが過ごす最後のモラトリアムを、全六章に渡って描いたのが今作である。

 この作品の面白さの軸となっているのは、魅力的なキャラクターたちだ。天然、ツンデレ、お姉さん、ロリっ娘などのギャルゲ的な個性にあふれるヒロインたちはとても可愛らしく、しかしそれだけに留まらない生々しい個性と事情を抱えている。そんな愛すべき少年少女の日常はとてもにぎやかで、けれどそこには終わりが必ずあって……。キャラに立脚した日常とその終わりの絶妙な対比によって、彼ら自身が訣別の決意を固め「ケジメ」をつけるまでのドラマは大きく心揺さぶるものとなっている。

 キャラを立たせることで物語の核となす、というのは泣きゲーでは王道の構成ではあるが、宴らしいえぐみを残しつつ上手にそれをなぞったのが今作。キャラゲーとして萌えゲーとして、泣きゲーとして青春ゲーとして優秀な一作だ。

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『嘘つきナレットの優しい暗殺者』
雨傘日傘事務所

 城塞街アイロンウッド。貴族付きの暗殺者として生きるスティラは、普段は専属の絵師として生活している。与えられた屋敷でこの週末も、彼の主に嫁いだ幼馴染・ナレットの訪問を待つ。そんな彼の元に、二カ月後に行われる夜会
に際し、隣国ニフルヘイムから一人の騎士とそのパートナーがやってきて……。



 サークル「雨傘日傘事務所」の『エリュズニールの騎士』に連なるシリーズの一作。シリーズとしては、ハイファンタジーにSFガジェットを織り交ぜた広大な世界観が特徴で、続き物ではないながらの登場人物たちのクロスオーバーも魅力の一つだ。

 端的に言えば、にぎやかなキャラクターたちと、燃えたぎるバトルがこの作品(というよりこのシリーズ)のウリ。個性的なキャラが織りなす喜劇とその裏にある悲劇とをしっかりと描きつつ、それらを踏まえて転がり込むバトルには興奮が抑えられない。CGのパーツ分けやカットインを充分すぎるほどに活かした動的演出は過去作以上の出来栄えで、商業作品でもこのレベルはまずお目にかかれないだろう。肉感的でアクの強かった絵柄も、個性を残しながら可愛らしく進化しており、より広く受け入れられるものになっている。

 物語に流れるテーマは「ウソ」。この物語は嘘を見抜く少女と、嘘をつけない少年の物語だ。ゆえに、叙述に若干混乱を呼ぶ部分があり、考察の余地があると言えば聞こえはいいが、疑問点が残る話ではある。しかし、それを差し引いても爽やかで良い余韻を残す物語であったと思う。

(初出:2011年12月)
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ユリイス名義(レビュー、エッセー風味) | 【2012-05-03(Thu) 23:15:21】 | Comments(-) | [編集]

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