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闇を奔る刃の煌き

『MYTH』以来(自分でびっくり)の久々のゲーム紹介は、C80新作の同人ゲーム『闇を奔る刃の煌き』です。

闇を奔る刃の煌き

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「夫婦になりましょう」
すれちがった名前も知らぬ娘にそう声をかけたのは、貧乏な若侍、片倉重蔵。
迷わずその手をとり駆け出したのは、隣の街の商家の娘、蛍。
常人には到底理解できぬその行動に、多くの者は驚き呆れ、そしてある者は困惑しながらも二人を迎え入れるのであった。
二人の前に立ちはだかる数々の壁。強い絆と信念でそれらを乗り越えていく内、重蔵は新たな決意を胸にする……。

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サークルの前作『流れ落ちる調べに乗せて』の数十年前。幕末のとある街を舞台としたお話です。簡単に言うと立志ものというか立身出世ものといいますか、貧乏侍である重蔵が蛍を娶ったことをきっかけとして「蛍が胸をはって夫を誇れるような」地位を手に入れるために粉骨砕身していく、というのが大体の筋。

こんなお話が上手いこと成り立つのには大前提がありまして、「重蔵と蛍が人格的にも能力的にも成功に足る好人物である」ことが必要になります。だって、「なんでこんなので成功してくんだろ?」「主人公補正乙」などと思わせたら負けなのですから。その辺りがこの作品の素晴らしいところで、重蔵も蛍も驚くべき胆力を持った豪快な人物でありながらも、決して猪突猛進や力押しなどではない知略と信念、そして何より相互の欠点を補い合う剣と鞘のような絆を以て未来を切り開いていく様には、感情的にも理性的にも納得せざるをえません。これを痛快と呼ばずになんと呼ぶか。たとえば坂本竜馬が人気なのは、言い伝えられるその豪快な気質のイメージとあまりにも鋭い先見の目によるのだと思いますが、まさにそんな感じです。

そして個人的にはここが重要なのですが、この痛快さによって、あんな成り行きでくっついた二人の信頼関係と人物に対する評価がさらに補強されているのが素晴らしい。「この二人には本質を見抜く能力がある」「この二人は本当にお互いを信頼しあっているのだな」と確信してしまえば、二人の行く末を見守りたくなる気持ちも起こってしまうというものです。これは二人だけに限らずその周囲の人物たちにも言えることですが。

言葉でこう表現するのは簡単ですが、これを実際物語上で実現できている作品は、ことノベルゲーであまり多く目にはしませんね。三人称視点からの渋みのある描写がこの裏打ちとしてよく機能してるのだと思います。

……とまあこんな持って回した言い回しをしなくても、「重蔵と蛍がかっこいい、魅力的だ」と一言で表現できてしまうのですがw

全四話あって、三話までが序、四話が破、後日談が急とも言うべき構成で、三話までと四話以降では評価を異にする必要がある(そしてあまり四話以降はネタバレなしでは語りたくない)のですが、四話の展開を評価できるのも三話まで、あるいは『流れ落ちる調べに乗せて』での丁寧な積み重ねがあってこそ。四話の展開は個人的には好みや願望に必ずしも沿ったものではなかったのですが、それでもその熱さに涙をこぼさずにはいられませんでした……(実はゲームで実際に泣いたの初めてだったり)

好みから言うと実は満点と言えるわけではないのですが、それでも絶賛する程度には素晴らしい作品でした。後日談まで読み終えたとき、言いようのない余韻と、独特の虚脱感が自分を襲いました。
好み云々関係なく、素直に「すげえ!とんでもねえ!」と思わせるだけの説得力。これがこの作品の最大の魅力なのでしょう。

(ネタバレなし範囲での)最後に。

公式ページにも「流落と闇奔をどっちをやればいいのか」的なことが書いてありますが、個人的には『流落』を先にやっておくことをおすすめします。というのも、『流落』からの伏線というかなんというか、ある情報を知っているかによって読後感が180度といわずとも90度くらいは変わりそうだからです。90度変わった時にこの作品に対してどんな評価が与えられるのか、僕には想像もつきません。僕としては『流落』を先にやった上でこのような評価をしたので、個人的には僕と同じようにプレイするのをオススメしたいですね。
実を言うと、プレイ順は『闇奔』一話~三話→『流落』→『闇奔』四話でして、振り返れば最高の形だったのではないかと思うのですが、さすがにそんな細かい指定でオススメはしませんww



それでは、以下、ネタバレありの感想です。核心どころか展開そのものの詳細を説明してるレベルなので要注意。

全部書くほどの気力はないので、個人的に好きな二話・四話・後日談の感想、というか書きたいことをば。一応白字反転にしておきます。『流落』のネタバレもあるので注意してください。

【第二話】
小菊のエピソードがたまらんかったですね。なぜ小菊が重蔵から蛍を取り返せる自信があったのか。その真実に気づかされたときは、小菊が背負った悲哀と、そして彼女の健気さ、強さ、そして愛の深さに胸を打たれずにはいられませんでした。
後半のメインである長ノ介の人物も、厳格な中にも人間くささの垣間見えるもので、ちゃんと蛍の父親なんだなということが伝わってきたのがよかったです。




【四話】
やっぱり幸せになってほしかった、というのが真実ではあります。ですが、すでに決められた未来。覚悟を以てこのお話を見届けましょう。
ヒロインが病気になって云々というのはご都合主義な感があって実はそんな得意な話ではなかったりするのですが、それまでの二人の絆を見ていれば感情移入せざるを得ませんね。
素晴らしかったのは、弥生が組合を説得する場面。重蔵が弥生の案を呑むことを決意して、弥生が思い出した蛍の言葉。
『きっと……うまく行く。大丈夫。だって、重蔵さまがいるから』
こいつにやられました。このセリフに全て詰まってる、と僕は思います。
蛍が直前の重蔵の説得において、女として母としての覚悟を固めていたのも良い(そこの場面も好きです)。後に重蔵が語っていたように、正義感でなく個人の感情の方が突き動かされるものがあります。

まあその後もいい感じに進み、物語は終わります。このお話の主役は弥生さんでしたね。それまで軟弱でしかなかった弥生が腹をくくって戦いに臨む姿にはほれぼれ。

実はというと儀式が終わった後の展開に、後述する微妙な納得のいかなさも手伝って若干鼻白むものがあったはあったのですが、まあそんなことはおいておいて……。




【後日談】
なんといっても。これの感想を書きたいがためにこの記事を投稿してるようなもんですしね!

一歩間違えれば単なる超絶鬱ゲーですよね。流した涙も胸の熱さも、後日談で全てがぶち壊されるのですから。

第四話にて、町に巣食う怨霊の呪いによる病によって蛍を失った重蔵。
しかし、絶対の愛を誓った蛍の決意と彼女の残した愛息子の未来を守るため、彼は封印の儀式に参加し、町を救う英雄の一人となります。
街中から喝采を浴びる重蔵。彼は「蛍が誇れるような伴侶となる」という大きな使命を、ここで達成することとなるのです。

……その数日後、蛍と同じ病に倒れていたはず(そして死んでいた、と読者は思いこんでいるはず)の親友、哲哉が重蔵に語るのは衝撃の事実。
かつての蛍の婚約者がほかならぬ哲哉であったこと。哲哉が蛍のことをずっと思っていたこと。
それでも二人を見守っていた哲哉の心の支えが、重蔵の商売の成功によってへし折られたこと。
呪いの発端は、哲哉の重蔵に対する深い嫉妬と己への絶望であり、蛍を殺したのがほかならぬ哲哉本人であったこと。
瀕死の体でそれでも生き続けてこられたのは、この事実を重蔵に伝えんとする執念であったこと。
そして哲哉は、同じように矜持を折られた、白庵の、善九郎の両親を引き合いに出し、重蔵に言い放つ。
「情けは人の為ならず――お前には、味方を蹴落とす覚悟など無かったのだ」、と。

唯一無二親友の裏切り、たった一人の伴侶の喪失、そして蛍が絶対の信頼を寄せた「自分自身」への信頼の崩壊。哲哉の告白に激昂した重蔵は哲哉を斬り殺し、これまで信じてきた何もかもを失って――『闇奔』の物語は幕を閉じます。「闇を奔る刃の煌き」、それは重蔵が親友だった者の最期に贈った憎しみの炎だったのでしょう。
そして『流落』ではたった一人残された孫娘すらも目の前で犯され、物語の最後には亡くしてしまう重蔵。「また家族を守れなかった」、そう彼は言ったと『流落』では描かれます。かつて、蛍との娘が産まれた暁に与えようとした名前を贈った孫娘を、どれだけ重蔵が大切に思っていたか、そして彼がどれだけ絶望に暮れたか、想像に難くありません。
これだけどん底に突き落としておきながらも、『闇奔』がただの鬱に留まらないのには、『流落』において重蔵が「自分以外は誰も信じてはならない」と聖に教えるほど人物が変わっていることが示唆されていたからにほかなりません。むしろこれくらいやってもらわなくては、第四話の顛末だけでは、蛍との愛と仲間たちの絆によって成り立っていた片倉家があのようなことになったことに納得がいかないのです。そして、事の発端が単なる呪いや悪意などではなく、重蔵の良き親友であった哲哉の極めて人間らしい感情であったということに一種の安堵のような気持ちすら湧き上がります。なにしろ、『闇奔』は『流落』と比しても、人々の生き様により根差した物語であったのですから。

衝撃、茫然、喪失感、そしてそれよりも大きな得心。容赦ない真相を知った私の心には確実にえもいわれぬ余韻と虚脱感がありました。

そして、ふと『流落』の後日談で描かれた彼のことを私は思い返します。
――孫娘すら失った重蔵は、みなしごであった幸を自らの屋敷に引き取ったのだ、と。
異能によって憂き目にあってきた幸を、似た境遇であった蛍の妹、小菊と重ねたのか、それともまた別の何かなのか。私にはそれを知る術はありません。
ただ一つ言えるのは、重蔵が最後に幸福を得るたった一つの希望があるとすればそれは彼女との生活でしかきっとありえないだろう、ということです。
だから、なにか一つだけでも、小さくてもいい、彼の最期が「幸」せとともにあったのだと思える手がかりがあったならば、私はこの物語にもう少しだけ希望を見出せたのかもしれません。



語りたくてしょうがないのに、身近にクリアした人がいなくてここに吐き出します。少しすっきりしました。
Twitter周りなどで『流落』からプレイを始めた人や興味を持ってくれた人がちらほらいるようで嬉しい限り。酷評する人もいるんじゃないかと不安もありますがww

もっとプレイする人増えないかなーわくわく
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エロゲ製品版 | 【2011-09-02(Fri) 03:34:34】 | Comments(-) | [編集]

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